不動産のまめ知識

賃貸経営に必要な知識-賃貸物件の売却時、法律関係をどのように構成するのか

  • 2016.05.14
 

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例えば、賃貸マンションなどでよくあることなのですが、賃貸物件が売却された場合、その法律関係をどのように構成するのかが問題となります。
具体的にいうと、次の3点がさしあたって問題となってきます。
 1.賃貸物件の所有権の移転により賃貸人たる地位も当然に移転するのか
2.賃貸人たる地位も当然に移転するとして、賃借人の承諾は必要か
3.旧賃貸人の賃借人に対する変更通知は必要か

素人目にはピンとこないのですが、民法の世界では、所有権者であることと賃貸人であること(つまり、物権と債権)は全く別なこととして構築されていることに由来しています。
しかし、小難しい法律の理屈はおいといて、ここではその結論だけを押さえておけば十分です。
なお、上記3点以外にも、敷金・保証金はどうなるのかという問題もあります。

1.賃貸人たる地位の移転
先述したように、原則として、賃貸物件を買い受け、その所有者になったからといって当然に賃貸人となるわけではありません。
しかし、判例・通説では、賃貸人、賃借人の合理的意思解釈(通常だったらそう考えるであろうという解釈)や、所有権の帰属と賃料債権の帰属とが分離することは避けるべきであることを理由・根拠に、所有権の移転とともに賃貸人たる地位も当然に移転・承継するとされています。

2.賃借人の承諾
法律上の理屈(賃貸人たる地位の移転は債務引受の性質も有している)からは、新賃貸人が賃借人に賃貸人たる地位の移転を主張する(例えば、家賃を請求する)には、原則として賃借人の承諾が必要ということになります。
しかし、判例・通説では、賃貸人の債務は没個性的であり、賃借人の不利益とならないことから、賃借人の承諾は不要とされています。

3.旧賃貸人の賃借人に対する変更通知
譲受人が債権譲渡を第三者に主張するには民法上譲渡人から債務者へ通知をすることが必要とされています。
したがって、賃借権も債権の一つである以上、新賃貸人が賃借人に対して賃貸人たる地位の移転を主張する(例えば、家賃を請求する)には、原則として、譲渡人、つまり、旧賃貸人から賃借人への賃貸人変更の通知が必要ということになります。

しかし、判例・通説では、所有権移転登記を具備すれば、新賃貸人は賃借人に対して賃貸人たる地位の移転を主張できるとし、変更通知は必ずしも必要とされていません。
ただし、無用の混乱を避けるため、実際には賃貸人が変更になった旨の通知をしているところが多いでしょう。
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