不動産のまめ知識

空室対策実践塾~空室対策には2つ以上の案を考える~

  • 2015.09.11
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今回は、Aさんの「空室対策」を一緒に考えましょう。

 

Aさんの物件は、築20年で10戸の居住用賃貸建物です。

 

家賃は平均6万円で、空室が4部屋もあります。

 

長く空いているのに、現在の管理会社から、何の提案もありません。

 

そこへ管理会社Bの営業担当が訪問してきて、「当社に、募集と管理をお任せください」と提案してきました。

 

Aさんは、B社の話を聞いてみることにしました。

 

 

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Aさんの希望は「このままの条件で決めて欲しい」というものですが、B社の提案は異なりました。

 

まず、現在の状況は、満室なら月額60万円の収入があるはずなのに、6部屋しか埋まっていないので、ロスが24万円も発生しています。

「この6万円の募集家賃は5年前のままで、現在の家賃相場に合わせる必要があります」

「建物・設備が古くなった分だけ、お部屋の価値が下がっていますし、この5年間に供給された新築物件も、募集家賃は抑えられているのです」

と説明しました。

 

Aさんは「4部屋くらい、この家賃で決める人もいるのでは?」と主張しましたが、「決まるかもしれませんが、空室が続くのは機会損失です」とのこと。

 

「家賃を下げるか、部屋の価値を上げるか」を選ぶ必要がある、とのことです。

 

現在の収入状況は、表の通りです。
満室時600,000円
ロス-240,000円
賃料収入360,000円
 
家賃を下げたときの収入は?

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Aさんは、家賃の値下げには乗り気ではありませんが、提案を聞いてみることにしました。

 

家賃を7千円下げて5万3千円にすれば、時間をかけずに決まりそうです。

 

しかし、収入予想を立てるときは、他の入居中の6部屋も、2年の間に5万3千円に近づくと、想定して計算するのだそうです。

 

インターネットで募集しますので、新しい家賃を知った入居者から「値下げの請求」が起こり、拒否しても退去されれば、次の募集は5万3千円になってしまうからです。

 

Aさんの、値下げに対する心配も、そこにありました。

 

値下げ案は、満室時の賃料は53万円になり、値下げ前より7万円も減ってしまいます。

 
満室時530,000円
ロス-53,000円
賃料収入477,000円

 

でも、空室のロスを10%で計算すると、上の表の通り、家賃収入は47万7千円となり、11万7千円も、収入が増える計算になります。

 

「なるほど、家賃を下げても、空室ロスが下がれば、収入はこんなに増えるのか」と、Aさんは思いました。

 

でも、家賃を下げることへの抵抗は消えませんでした。

 

値下げをすると、数年すれば更に下げないと埋まらなくなり、家賃が「下がり続けるのでは?」、という不安が拭えないのです。

 

 

B社からは同時に、「リフォームして価値を上げる」方法も提案されました。

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Aさんの物件は和室と洋間で42㎡の2DKですが、最近では人気がない間取りと言われます。

 

まず、「入居者ターゲットは絞った方がいい」ということで、30台の独身が想定されていました。

 

30台独身の需要は増えているのに、供給が多くはないのだそうです。

 

B社の提案は、和室を洋間に変えて1LDKにし、女性向けと男性向けと、それぞれのお部屋を用意します。

 

女性向けの部屋は、キッチンセットは赤いカッティングシートで化粧して、洗面台とトイレは新しく、ユニットバスは表面塗装でそのまま利用します。

 

洋間の壁紙に女性好みのアクセントクロスを採用して、玄関に「花を飾れる可愛いいスペース」を設けます。

 

男性向けの部屋は、白と黒を基調に同じようにリフォーム案を考えます。

 

費用は一部屋80万円で外壁はそのままです。

 

全部屋をリフォームすると800万円の費用がかかる、との内容です。

 

リフォームしたときの収入は?

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B社の案では、家賃は据え置きで満室時の賃料は60万円のままです。

 

空室ロスを5%で計算すると、月額収入は57万円と大きく増えました。

 

ただし、800万円を借入れたときの返済が、7年返済で毎月10万円となるので、差し引くと47万円になります。
満室時600,000円
ロス-30,000円
賃料収入570,000円
返済額-100,000円
差引き470,000円

 

家賃を下げたときと「ほぼ同じ」です。

 

Aさんは「80万円もかけてリフォームしたのに、家賃を上げられないのか?」と言いましたが、B社の考えは、30台独身が、この地域で払える賃料は6万円が限度、とのことでした。

 

そこで、もうひとつのリフォーム案です。

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入居者の対象をカップルに変えれば「7万から7万5千円くらい出せる」とのことなので、カップル向けのリフォームを考えることにします。

 

外壁を塗り替え、水回りの設備を全て入れ替え、エアコン・ウォシュレット・テレビドアホン・インターネット回線等の設備を付けて、間取も若いカップル向けに変更します。

 

費用は総額で2500万円になりました。

 

「築20年の建物に2500万円も!?」とAさんは驚きましたが、この規模の建物を新築したら9千万円はかかります。

 

「これで15年もたせる作戦です」とB社に説明されました。

 

家賃は7万5千円で満室時の賃料は75万円です。

 

ロスは5%として

 

賃料収入は約71万円になります。

 

借入れ額2500万円を10年返済で計算すると、毎月の返済額が23万円なので、差し引き

 

52万円になりました。
満室時750,000円
ロス-40,000円
賃料収入710,000円
返済額-230,000円
差引き520,000円

 

3つの案の中で一番よい数字です。

 

分かりやすく一覧にしてみました。


(月額)現状のまま家賃を値下げした場合単身者向けの800万円のリフォームカップル向け2500万円のリノベーション
満室時の収入600,000円530,000円600,000円750,000円
空室のロス-240,000円-53,000円-30,000円-40,000円
賃料収入 360,000円477,000円570,000円710,000円
返済額-100,000円-230,000円
差引きの金額360,000円477,000円470,000円520,000円
 

どの案を選ぶべきか?

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Aさんは、B社に任せるか、どの案を選ぶか、これから慎重に検討するようです。

 

でも、何も提案してこない、現在の管理会社と比べて、B社が3つの提案をしてきたことを、Aさんは評価しています。

 

このように、複数の案をシミュレーションしてみると、それぞれの方法による本当の成果が見えてくるので、「分かりやすく判断しやすい」とAさんは思いました。
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